メディアによる制作上の違い
電子書籍とDTP・Webの制作フローの違いについては、1時間目にお話ししました。
今回は、実際の制作上の違いについて、お話ししたいと思います。ここでいうEPUBとは、リフロー型と呼ばれる様式での表示のことと考えてください。
DTP | Web | EPUB | |
---|---|---|---|
ページの概念 | 指定した 用紙サイズ |
デバイスの画面サイズ等を考慮して指定 | RSのページサイズに より、自動調整される |
コンテンツの視聴に 必要なアイテム |
特になし | ブラウザ | RS(リーディング システム) |
コンテンツの 書体の再現性 |
あり | デバイスに依存 Webフォント対応はCSS3以降 |
デバイスに依存 フォント埋め込み対応 |
想定される制作ソフト | Illustrator Photoshop InDesign Acrobat |
Photoshop Fireworks Illustrator Dreamweaver等 |
InDesign Photoshop Sigil Dreamweaver等 |
カラーモデル | CMYK | RGB | RGB |
指定サイズ | mm, 級, 歯 | px, %, em | px, %, em |
ドキュメントファイル | ai, pdf, 他 | html, css, 他 | xhtml, css, 他 |
画像ファイル | psd | png, jpg, gif | png, jpg, gif, SVG |
まず、ページの概念からです。それぞれのメディアにページという単位が存在します。
DTPの場合は、ページサイズは用紙サイズそのもので、誰が見ても同じ内容です。印刷物ですから当然ですね。
Webの場合は、ブラウザの横幅を考慮してページのサイズを決定し、一般的に縦長に作成し、スクロールさせます。
EPUBでは、まったくページの概念が異なります。ページは、リーディングシステム(以後RS)で表示したときの一画面に表示される内容、見開き表示の場合はその半分の内容となります。つまり、RSやハードウェアの画面サイズや設定などに依存するため、ページ内容は常に変わることを考慮しなければなりません。
コンテンツ視聴に必要なアイテムは、ご覧の通りです。
DTPは印刷物ですので、特に必要ありませんね。Webでは、ブラウザを起動して閲覧しますよね。EPUBの場合は、リーディングシステムが必要です。別名、電子書籍ビューワー、電子ブックビューワー、Ebook Readerとも呼ばれます。
出版物にとって、書体は非常に重要な要素となります。書体の再現性はというと……。
DTPは印刷物ですので完全に再現されますよね。
Webでは原則ユーザー側のPC(ハードウェア)が持つフォントであれば表示することは可能ですが、それ以外の書体を再現することはできません。ですので、テキストでありながら、デザイン性を優先して画像として表示させることもあります。しかし、SEOを考慮すると、画像よりテキストの方が強い効果が見込めるため、どれを画像で、どれをテキストで表現するかは、非常に重要な要素となります。
しかし、現在はWOFFというWeb専用のフォント形式があり、これをWebページで利用する技術もあります。HTML5+CSS3からサポートされる新技術ですので、これからだんだん一般化されていくでしょう。
EPUBのフォントの再現性は、Webと似ています。PCなどのハードウェアやリーディングシステムが持つフォントは指定可能なのですが、EPUB内にフォントファイルを埋め込み、これを表示させる機能は規格上EPUB2から可能となっています。しかし、現状はRSの対応はさまざまです。詳しくは、後の講義でお話ししましょう。
制作上想定されるソフトウェアは、表の通りです。
カラーモデルも、電子書籍はスクリーンで閲覧しますので、Webと同じでRGBカラーでの指定になります。
指定サイズも、Webと同じで、px, %, emを主に使用します。Webも現在はさまざまなスクリーンサイズで閲覧することが想定されるため、レスポンシブデザインという新しい考え方が脚光を浴びていますが、EPUBも同じでどのサイズでも最低限の可読性を保証する必要があるため、必然とpxではなく、%やemの指定が多く使用されます。
ドキュメントファイル形式は、Webはファイルの拡張子としてhtmlとcssを使用しますが、EPUBも同様でxhtmlとcssをよく使用します。しかし、EPUBの場合は、他の拡張子を使用することもあります。EPUBではその他さまざまなドキュメント形式があります。
使用可能な画像形式もWebとほぼ同じと考えていいでしょう。SVGという特殊な画像形式を使用する場合もあります。
- まとめ
- EPUBのページは画面や設定に依存するため、ページ内容は見ている環境で異なる
- EPUB制作ではWebに近い考え方や手法を使用する
- やはりWebページ制作の知識や技術は必要不可欠