電子書籍とWeb標準規格の変遷
電子書籍制作技術とWebページ制作技術とは、密接な関係があります。電子書籍規格は、Web標準規格をベースにして発展してきました。電子書籍の規格を理解する前に、Web標準規格について理解しましょう。
Webの標準規格
1993年ごろ、SGMLという言語からHTML1.0というWebページ制作言語が派生しました。このころはまだインターネットは、一般的には普及していませんでした。
やがて、W3Cという団体がHTMLの標準化に乗り出し、そのバージョンはHTML3.2へと進化を遂げます。インターネットの黎明期と言っていいでしょう。
そして、HTML4.01となったWeb標準規格は、ここで初めて見栄えを定義するCSS(カスケーディングスタイルシート)という考えが誕生しました。インターネットの成長期です。
このバージョンでは、DTDという考え方が導入され、Strict(厳格)、Transitional(移行型)、Frameset(フレーム設定)の3つの制作方法が勧告されました。
Strictは、厳格に規格に沿って作成する方法を表し、TransitionalはHTML3.2の一部使用を認める緩やかな規格です。Framesetは、今となっては過去の産物であるフレームについての規格です。
ちなみにW3Cは、草案→最終草案→勧告候補→勧告案→勧告というプロセスで規格化を行います。
さらに、インターネットの普及に伴い、Web標準化を目指し、XMLという言語の一部の仕様を採用し、2000年にXHTML1.0が誕生しました。現在最も普及している規格です。
さらに、続けて翌年XHTML1.1が勧告され、Transitional DTD(移行型)とFrameset DTD(フレーム設定)はなくなり、Strictが標準になりました。ただし、このバージョンはあまりにも厳格すぎたため、実際に制作で使われることはあまりありませんでした。
厳格なXHTMLの仕様に対し、融通性の高いHTMLが見直され、HTML4の仕様とXHTML1.1の仕様、さらに多くの機能が追加され、最新の規格HTML5が規格化されようとしています。
HTML5は2014年に勧告予定です。しかし、既に先行してブラウザに実装されている機能も多くあります。
現在は、XHTML1.0 StrictまたはTransitionalからHTML5への移行期にあたります。HTML5またはCSS3の中でブラウザに実装されている機能を選んで使用するといった流れが主流です。
電子書籍の標準規格
さて、電子書籍に目を向けると。
1993年、電子書籍の普及に大きく貢献するAdobe PDFが発表されました。Webのはじまりとほぼ同時期です。
日本最古の電子書店「パピレス」もこのころに誕生しました。
日本でも携帯電話の普及に合わせて、電子書籍は広がりを見せました。そのころ使われていた制作フォーマットが、.book(ボイジャー)とXMDF(シャープ)でした。
2007年に入り、アメリカでKindleが発売されると、電子書籍は一気に普及しました。現在はKindle Format 8が最新です。電子書籍を制作する場合には、押さえておきたい仕様です。
また、PDFもISOが標準規格として認定しました。
電子書籍の標準規格は、当初OeBFという団体が行いました。1999年にOEBPS1.0を策定したのが、始まりです。
OEPBSはXML1.0をベースに策定されました。
OeBFはIDPFに名称変更され、2007年に現在実用化されているEPUB2.0が策定されました。
EPUB2は、Web規格であるXHTML1.1とCSS2をベースに策定され、アメリカを中心に大きな広がりを見せました。
しかし、EPUB2は、完全な英文仕様であったため、日本の出版文化である縦組み、本の右開き(右綴じ)、段組み、ルビ(ふりがな)等はサポートされませんでした。
日本の団体がIDPFに働きかけ、やがて上記の機能をすべてサポートした、EPUB3.0が2011年に策定されました。
2012年には、Fixed Layout(固定レイアウト)の規格も策定されました。
EPUB3は、HTML5とXML1.0のミックスされた規格であるため、XHTML5とも呼ばれます。さらに、CSS2.1とCSS3の一部が採用されました。
しかし、現在のハードウェアやツール、リーディングシステムは、まだまだEPUB3に完全対応とはいかないのが、現状です。
- まとめ
- Webページ制作技術の規格をベースに電子書籍の規格が決められている
- 電子書籍で押さえたい仕様は、EPUBとKF8(Kindle Format 8)
- EPUB2のベースは、XHTML1.1+CSS2
- EPUB3のベースは、XHTML5+CSS2.1+CSS3の一部
- 最新のEPUB3に完全対応したハードウェアやリーディングシステムはまだ少ない